夕月もも

タンスの向こうは銀英伝が生んだ十二国記

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タイトルを聞いて萌えたら、あなたはもう私たちの仲間だ♪

▼目次

  1. 読書は娯楽だ!と叫んでみる
  2. タンスの向こうへ行ってみよう
  3. タンスの向こうへ行かれない諸悪の根源
  4. タンスの向こうから帰れない

1.読書は娯楽だ!と叫んでみる

読書は手軽な趣味だったはずが高尚な趣味、いや、勉強のはしくれくらいに成り下がってしまった?いやいや、ゲーム・動画視聴・映画・アニメなどのサブカルチャーと同じく、ちゃんとした娯楽なんだ! 

という熱弁を誰かに、あるいは何かに向かって無性にふるってみたくなることがある。

「趣味は読書」と言ったときに感じるそこはかとない気恥ずかしさ、「へえ~そうなんだ、すごいね」と返されたときの「違う、そうじゃないんだ。すごくなんかないんだ。読書は趣味だ。娯楽だゲームと同じなんだ・・・」とおなかの中でごにょごにょと言い訳したくなる感じ・・・。

仲間が少ない趣味のため、ジャニーズファンや韓流ファンの友だちがきゃーきゃーと盛り上がっているのを横目に、私もああやってだれかときゃーきゃーを共有したい・・・と羨ましく思うこと多々ある。

2.タンスの向こうへ行ってみよう

というわけでタイトルの解説から。

銀英伝とは田中芳樹氏の代表作で、「銀河英雄伝説」という全10巻のSFシリーズ。省略されてファンの間では銀英伝と呼ばれている。

1980年代の出版なので40年くらい前の作品だが、2019年くらいまで関連作品が発売されているし、アマゾンでチェックしたところ本編のシリーズもまだ売れているようだ。

出典:dアニメストア(https://anime.dmkt-sp.jp/animestore/ci?workId=20144)

未読の方のためにざっくりあらすじを述べると、舞台設定は人類が宇宙に広く分布し、政治的・社会的な中心地も地球以外の惑星に遷ってしまっている遠い未来で、銀河帝国(独裁)と自由惑星同盟(民主主義)の2大(といっても同盟のほうが規模が小さい)陣営の争いの歴史を描いている。

その争いのテーマが、「最高の人格者が運営する独裁政治」対「最低の衆愚政治に陥った民主主義」の葛藤で、帝国側の素敵な独裁者がラインハルトという容姿端麗、頭脳明晰、豪胆無比、ストイックで努力家で勤勉で・・・とどれだけ褒めても足りないようなキャラクターに設定されており、片や日本に生まれ育った身としてはぜひとも肩入れしたい民主主義の代表同盟側は、汚職に保身、既得権益にしがみつく輩の有象無象が描かれていて読者を悶絶させる。

ところで、唐突に話は飛ぶが、読書を趣味に持つ人でも巻末のあとがきや解説は読まない人もいると思う。

アニメや映画は好きだがエンドロールが始まると席を立つ、という人の心理と同じ理由だと思うが、銀英伝(文庫版)の解説は一読をおすすめする。

なぜなら、9巻の解説を書いているのがホラー小説で有名な小野不由美氏で、その解説の中に見逃せない一文があるのだ!

引用すると長くなるのでその内容をざっくりと説明すると・・・

ラインハルトは素晴らしい、素晴らしいがその為政はいずれ終わる。終わった後の保障がないのが独裁の欠点だ、では「死なないラインハルトなら・・・?」

死なないラインハルト!!!

あのシリーズってここから生まれたの!!!!

と共感できる誰かと盛り上がりたいが身の回りに読書家がいないので、我が子を読書仲間とすべく長期計画を組み苦節18年。

ごく最近念願かないました。長かった。

閑話休題。

死なないラインハルトから生まれたのが小野氏の代表作「十二国記」シリーズだ。

こちらはホラーではなくファンタジー小説で、ライトノベルの体裁だが大人が読んでも充分楽しめる。ちなみに未完。

このシリーズもファンタジーとして、冒険小説として読むだけでも面白いが背景に政治のテーマが流れており、ここに例の「死なないラインハルト」からの着想が生きている。

庶民は寿命のある人間だが、為政者たる王と、王に仕える者たちは不老不死という設定になっている。

王はふさわしいものが選ばれる仕組みがあり、善政を敷いている間は不老不死だが、王たるにふさわしくない行いが続くと資格を失い、寿命がつきる。

この世界観だけでもわくわくするストーリー展開が想像できるが、ここに時々こちら(現代日本)から流れ着く人間がいる、というファンタジーあるあるな設定もある。

そうやって日本からこの異世界にやってきたある少年がつぶやくのが「タンスを通り抜けたみたいにして」

この短い文は、わかる人にはわかる一文で、もちろんわかならくても問題なく読み進められる。

どこからの引用かわからなければ異世界に移動してしまった状況の比喩として何気なく目が通り過ぎてしまうほんの短い一文にすぎない。

だがもちろんこれは有名な「ナルニア国物語」の始まりを表しており、ファンタジーを愛する読書家としては小野先生もナルニア好きなのね・・・♡という萌えポイントなのである。

駆け足でナルニア国物語を紹介すると、これも古いシリーズで初版は1950年、著者はC.S.ルイス氏。

ファンタジックな児童文学で、喋る動物や神話に出てくるような登場人物に、剣と魔法の世界「ナルニア」と現実世界のイギリスを、古い衣装タンスを介して行き来する子どもたちの冒険ストーリーを描いている。

割と最近(といっても10年くらい前)実写で映画化されたので、3作の中では一番知名度があるかもしれない。

ここでようやっとタイトルに戻ると、

私の敬愛する小野先生はナルニアシリーズも銀英伝もお好きなのね~~~~!!!私と一緒!!!

という読書ファンのマニアックな叫びだった、ということです。

3.タンスの向こうへ行かれない諸悪の根源

読書離れが叫ばれて久しいのに、子どもが本を好きにならないのは活字よりとっつきの良いゲームやネットの普及もあるけれど、最も良くないのが読書感想文と推薦図書の存在だと思う。

読書量が一定量を超えると、作文能力はある程度ついてくるので、強制的に作文を宿題にすることで本を読ませるのは順序が逆だし、義務感が先に立ち面白くない。

ちなみに、読書が好きで活字中毒で文章を書くのも決して嫌いじゃない私。でも読書感想文は書くのも読むのも大嫌いだし、いますぐ世の中からなくすべき悪習と信じる。

もうひとつ、教育的意図見え隠れする(ように思える)推薦図書。

推薦されている図書側にはなんの問題もなく、素敵な作品も多数あるが、学校などで配られる推薦図書のリストはなんだかこうもやっとする意図が隠れているように感じられて、子ども心にこんなの読むもんか、と思わせる匂いがあった。

学校に求めたいのは図書室の充実と、読書に対する気軽な雰囲気づくりだ。

まず図書室が遠いところにあるのは良くない。

ドアは開けっ放しにして、図書室では喋ってはいけない、というルールもできればないほうが良い。

公共の図書館とは違い子どもしか来ない学校の図書室にはもっと明るさと気軽さがあったほうが良い。

ちなみに最近の公立小学校、中学校の蔵書ラインナップは悪くないように思う。

私が知っているのは在住市内の図書室事情に過ぎないが、ライトノベルや漫画も充実していて新作も旧作も良い感じに置いてある。

4.タンスの向こうから帰れない

読書は楽しい娯楽だよ、とどれだけ熱弁をふるっても、いやそもそも熱弁を聞いてくれる誰かももはやいないように思える今日この頃、2人の我が子はどうにか活字中毒の仲間に引き込むことに成功し、我が家では読書は「いつまで本読んでるの!! もうやめなさーい!!」と叱られる娯楽のひとつになっている。

「何か面白い本ない?」と聞かれるこのヨロコビ・・・・

寝なくてはならないとわかっているのに本が置けずに、ああ今日も4時間しか眠れない、と思いながら沈没し、目覚めたらタンスの向こう側だったらいいのに、と願う夜中の2時。

表題の3作ともまだ未読のひとが羨ましくもあり。

これから読んでみようかな、と思われた方はぜひナルニア→銀英伝→十二国記の順にお読みあれ。

そして読了した暁には一緒にきゃーきゃーしましょう・・・

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