シェアハウスで暮らす2人の子を持つ女性ルビーの日常を描く連載エッセイの第二弾です。第一弾はこちら
▼目次
5.尽くしたいみきちゃん
「こんばんは。ただいまです」
「おかえり」
疲れ切ったみきちゃんが遊びにきた。
「ルビーさん。結婚てどうやればいいんですか?」
みきちゃんは半年前までここに住んでいて、友達の紹介で知り合った彼氏と半年前に 結婚した。
みきちゃんは結婚前までシェアハウス生活。
ご主人はずっと実家暮らし。 みきちゃんは商社で総合職の会社員で、結婚後も退職せずに働いている。 彼氏も大手企業にお勤めらしい。
「どうしたあ?幸せいっぱいのSNS見てるよ〜。どしたの?なにがあった」
みきちゃんは独身時代からSNSで近況をUPしていて、結婚してからも素敵な事をたくさんUPしてたけど?
「私は要領が悪くて、彼を待たせちゃうし」
聞くと、家事は全てみきちゃん、全てをやりたいからやっている。 休日は恋人気分も保ちたいからデートをしていて、溜まった家事はできずにまた平日に持ち越して続いていく日々。
「みきちゃん!死んじゃうよ。毎日変わらずお仕事してるんでしょ?」
「うん。仕事辞めたくないし。自分の企画できるようになったし。仕事が楽しいけど、彼と不自由なく生活したいの」
みきちゃんは同棲したことはないのね。
今までの彼氏にも通い女房しちゃってましたよね。 一人暮らしの彼らは、みきちゃんの超尽くしに初めは喜んでいるけど、だんだん侵食されていくのに怯えて別れちゃうのね。
結婚した彼はずっと実家暮らしで、家事経験ほぼなし。一緒に暮らしてからも実家暮らしと変わらずに快適に暮らしているんだね。
「彼と家事分担したら?」
「一緒にやりたいって言ってくれるし、やり方教えてって行ってくれる」
「本気で言ってくれているんでしょう?じゃあやってもらおうよ」
「だめ。家ではくつろいでいて欲しいの」
何でもしっかり丁寧にしたいみきちゃんだから、家事全部してるんだろうな。
うーん。このままじゃ良くないけどがするね。
「みきちゃんの好きなイチゴ焼酎のお湯割りを作ってあげよう」
野菜室の果実酒ストックの一つ。
イチゴを洗って水気を拭き取ってヘタを取り、ポリ袋に入れて2日間位凍らす。
熱湯消毒したガラスポットに冷凍イチゴと焼酎と甜菜糖を入れて。5日ほど置けば出来上がり。
身を取り出して潰してツブツブ果肉を炭酸と一緒に楽しんだり、牛乳と合わせてイチゴミルクもおすすめ。
「お話ししたら少し落ち着きました。どうしたらうまくできるかまた考えてみます」
「行ってらっしゃい」またおいで。
6.愛のズボラ飯
数日後、みきちゃんのご主人が共通の友達と遊びにきた。 今日はみきちゃんが出張なんだって。
「おかえり」
「ルビーさん。恐縮です。みきがいつもお世話になってます。結婚式以来のご無沙汰ですみません」
好青年なのよね。しっかりしてるわ。
気の利く好青年のお土産のワインで乾杯!
「みきちゃんが最近すごく疲れていて、どうしたらいいかわからなくて」
「一緒に家事させてもらえないんだっけね」
「僕も何も役に立ちないんです。僕は何もできないけど、覚えてみきちゃんの役に立ちたいし、一緒に家事をしたいです。ルビーさん教えてくれませんか?」
「うんうん。良いよ」
お義母さんに聞くよりは私の方が波風立たずかもしれないよね。
飲みながら作戦会議。 共通の友達は同棲中の失敗談などカミングアウトしながら応援してくれたね。良い子だ。
「みきちゃんの為に簡単でも良いからご飯作りたいです」
「ご飯作るってのは準備から片付けまで全部しないとなんねええどおお〜」
「みきちゃんの好きなミートボールで何かできますか?」
え?出来合いのミートボールをアレンジって?
「できるけども。やってみようね」
大きめの耐熱ボウルにご飯、ミックスベジタブル、ケチャップとミートボールを入れてふんわりラップをしてレンジで様子を見ながらレンチン。塩こしょうで味を整えて出来上がり。
「ミートボールライス!!!」
「超簡単にできますね」
「よし、次!お野菜摂りたいよね」 きゅうりを折りながらジッパー袋に入れて、潰して、折る。塩とごま油と七味を混ぜ合わせて出来上がり。
「すご!二品とも包丁も火も使わないし、僕もできる」
よし食べよう。
「うめええ〜男飯?簡単飯?」
良かった、良かった。
「ちょっとだけ自信つきました。また他にも教えてください」
「良いよ~。ちょっとずつやってみよ」
「ワイン持ってまた来ます」
「行ってらっしゃい。またおいで」
7.愛を信じて
その後、みきちゃんは姿をみせず。
ご主人の来訪もなく。
「便りのないのは良い知らせ」
SNSも上がってないけど。
忙しいのかな?
って思っていた矢先。
「ルビーさぁん。どうしたら良いかわからなくて迷子です。助けてください」
わああ。どうしたかな。
有給でお家にいるみきちゃん宅へ、仕事帰りに訪問。
「こんばんは。お邪魔しますよ~」
新居に引越したてにちょこっと寄った以来。
「ルビーさん。私。私」
号泣のみきちゃん。
「どしたの。ご主人に女できた?DV?借金とか?」
「違うんです。毎日大事にしてくれるし、家事も手伝おうとしてくれるし、元気ない時はお花買ってきてくれるんです」
なんやそれ。最高じゃんね。
「私は彼に感謝だけど今まで以上に尽くしたくて。あとどうしたら彼が喜んでくれるんですか?」
毎日お花買ってくれるのかと思うくらい。お花でいっぱい。
引っ越したての頃以上にお部屋はピカピカ。
お互いがお互いを気遣ってこうなってるのかな。
「私、今までこんなにしてもらった事ないから、幸せだけど不安だし、彼にしてもらった分、お返ししたいの」
「要らんやろう~甘えれば良いんだよ。みきちゃんの事が大好きで大事にしてくれてるんだから」
「不安なんです。調子に乗って甘えたら、離れていっちゃうから」
「ミートボールごはんって食べた?」
「はい。残業で彼より遅くなった日はきゅうりのお料理と作って待っててくれるんです」
かわいい。それだけを作り続けるご主人。がんばってるね。
「みきちゃんがね。ミートボール好きだから、作れるようになりたい。ってきてくれたんだよ。家事ももっと勉強したいって。みきちゃんと一緒にやりたいんだってね。後片付けもちゃんとやってくれてる?」
「はい。私がやるからって言っても、家事のお手伝いは最後まで責任持ってやらなきゃダメなんだって言ってた。ルビーさんが教えてくれてたの?お義母さんにグチったりしてたらとか悩んでた」
「ご主人が美味しいワイン買ってきてくれるから、教えてたよ」
「1つモヤモヤ消えたわ」
おお、良かった。
そろそろ飲みたいルビーさん。
ビールをプシュっと。
「乾杯。私はどうすれば良いんですか?」
「どうしもないさ。ご主人はみきちゃんと一緒に生活したいんだよ。みきちゃんの事が大好きで大事に思ってるんだよ」
「今までそんな人いなかったから。信用して良いのかな?不安だよ」
だめンズウォーカー長いとね、わかるよ。うんうん。
「彼は誠実よ。心を許してさらに甘えたら良いんだよ。ちゃんと自分の気持ちも話して、お互いに家族になるんだよ」
みきちゃんはずっと泣いていた。不安なんだね。
結婚して家族になったから、信用して愛しあって生活して欲しいね。
冷蔵庫の酒をほぼ飲み干して、みきちゃんを寝かせて。帰宅。
後日、みきちゃんとご主人が訪ねてきた。
「おかえり」
「私ね、幸せなんです。聞いて欲しくて2人できました」
お土産のお酒たちは持ちきれないほど。
「おうおう。聞きましょう。聞きましょう。その前に、こんだけお酒あるからツマミが必要ね」
とりあえず乾杯。
「ルビーさんにも甘えちゃう。彼の好きなお刺身買ってきたので、おつまみ作って~」
お刺身ってお刺身のままでも良いけど。
ちゃちゃっと作ろう。
まずは、カツオのたたきね。
玉ねぎを半月の薄切りにして水にさらして、水気を取って、生姜のすりおろしとポン酢で和える。
玉ねぎがしんなりしたらカツオを優しく混ぜて出来上がり。
マグロは、2種類にしよう。
オクラをこすりながら洗ってさっと茹でて冷水で冷ます。
ボウルにわさび醤油を作って、オクラを斜めに食べやすい大きさに切り、マグロと優しく混ぜて出来上がり。
もう一つは。レタスを食べやすくちぎって、水切りしておき、レモン、塩、植物油をよく混ぜます。
レタスとマグロを優しく混ぜ合わせれば簡単マグロのサラダ仕立て出来上がり。
今日も手抜きですが。どうぞ召し上がれ。
お酒を飲みながら、ふたりの幸せなお話を聞いてお腹いっぱい。
みきちゃんの不安はどこかへいってくれたかな。
「いってらっしゃい。またおいで」