さくらこ

【連載】ルビーの日常〜ご婦人のシェアハウス訪問

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シェアハウスで暮らす2人の子を持つ女性ルビーの日常を描く連載エッセイの第六弾です。第一弾はこちら

▼目次

1.ご婦人のシェアハウス訪問

すき焼きご婦人会にて急遽決まったママ友の理恵ちゃんがシェアハウスに遊びに来るという企画が本日ついに開催です。

最寄り駅までお迎えに行って徒歩10分の道のりをぷらぷら二人で歩く。

「駅から10分って良いよね。ルビーちゃんの自宅って徒歩40分弱だっけ」

「そうなのよ〜自宅は駅3kmってGoogleマップさんが教えてくれていますからね」

「ここはひたすら住宅街だね。静かでいいね」

と、話しているうちに到着。
理恵ちゃんは呆然と建物の外観を見つつ…

「こんにちは」

「おかえりなさい」

「え。あ。ただいま。で、良いのかな?理恵ちゃんです。初めまして、よろしくね。おじゃまします。まさかの一軒家なんだね」

「ようこそ。初めまして」

今日はタツ君とホイミ君とサトシ君がいます。
めったに来ないルビーのご婦人なお友だちを楽しみにしてお迎えしてくれています。

「え?男の子3人!!!ルビーちゃんの息子と同級生くらい…一人はおじさん?」

「あと他に女の子もいます。おじさんな俺は、たつです。みんなとそんなに歳の変わらない30代のね」

タツくんはどっちかっていうと童顔なのでおじさん呼ばわりはショックだったかもね。
そして理恵ちゃんは50代半ばのご婦人で発言は今日もハードなのかもね。

「ルビーちゃんがお世話になってます。ルビーちゃんところの王子の同級生ママ友の理恵ちゃん
です」

「よろしくお願いします」
「よろしくお願い申し上げます」
「よろしく」

微妙な緊張感漂う中、タツ君が

「理恵さん…はビール好きなんスよね。冷やしておきましたよ」

「あら、おじさん…タツ君…だっけ?気が効きくじゃん。ありがとう。みんなで飲もうよ」

「そうですよ。タツですよ、おじさんって〜。まあいいや。俺は今日、理恵ちゃんと乾杯したい」

「乾杯!」
「乾杯!」
「乾杯!」
「乾杯!」
「乾杯!」

理恵ちゃんはいつものペースでビールを飲みながらとにかくキョロキョロ。

「理恵ちゃんはシェアハウスとか初めてです?僕は他のシェアハウスへ遊びに行ったりはしてたけど、住むのは初めてです」

サトシ君が話かける。

「君はサトシ君?
イケメンね。
モテるでしょ?
いいわね〜。
あ。そうよ、私の時代にはシェアハウスなんてないもの。同性の同居か、カップルの同棲ぐらいしか知らないわよ」

理恵ちゃんのマシンガントークの凄さよ。
サトシ君は若干の引き気味だけど、神対応。

「うんうん。ですよね〜。理恵ちゃんの言うとおりですよね」

ニコニコしている理恵ちゃん。

「シェアハウスっていつ頃から拡散、発展されたんでしょうね?自分がお世話になっていても詳しく説明となるとそこまで理解していない現状です。すみません」

ホイミ君ががんばってお話ししてくれる。

「君はホイミ君ね。日本以外のルーツかしら?イケメンね。そしてまじめなのね。
じゃ、ホイミ君!お家を案内してもらいたい〜」

「僕でよろしければ」

「美咲の部屋以外は全部案内してあげて、俺たちでつまみ用意しとくわ」

タツ君の機嫌は大丈夫みたいね。
一緒におつまみ準備しよう!
理恵ちゃんはシェアハウスツアーへ出発。

「バーニャカウダって健康的に酒飲み感強めだよね。にんにく効いたクリーミーなソースをぐつぐつして生野菜付けて食べるとかオシャレだし、だいたいの酒とマッチするよね」

「うんうん。このソース食べたさにバーニャカウダ頼むよね。お野菜ももりもり食べちゃうよね」

ご近所さんにいただいたお野菜を食べやすく切って、一瞬だけ氷水につける。
作り置きしてるバーニャカウダソースを解凍して、小さな固形燃料使用の一人用小鍋にてぐつぐつ。
タツ君が準備してくれた燻製はDIYしてお庭で作った物。
フレーバー枝豆と焼き鳥風ピンチョス。居酒屋メニューをおしゃれにアレンジ。
ドライフルーツとナッツと共にきれいに盛り付けられた。

先程から姿が見えないサトシ君は何しているのかな?

「2階のバルコニーから歓声がするぞ」

理恵ちゃんのやまびこ。ヤッホー(昭和)とホイミ君の笑い声がする。

「理恵ちゃんもバルコニー気に入ってくれたのかもね」

2.ご婦人のシェアハウス探検

「ヤッホー!このバルコニーめっちゃ気持ち良いね」

「ヤッホーって、ハハハハハハハハ」

遊びに来てくれた理恵ちゃんはホイミ君とシェアハウス内を探検中。
理恵ちゃんのリアクションはホイミ君には新鮮だったみたい。

「ここは築何年なの?かなり古いよね。ホイミ君から見たら、おじいちゃんおばあちゃんの家って感覚じゃないの?」

「そうですね、実家はマンションですし、存命の祖父母の家は海外なので感覚は違うかもしれませんが、築40年くらいと聞いて、初めて来た時はビックリしましたけど。住むとね、落ち着くんですよ、この感じ」

「ふーん」

「理恵さんはご家族で住んでるんですか?」

「うちは旦那と長女との三人暮らし。長女は王子と幼なじみなのよ。
私もルビーちゃんも同級生のママ友とか苦手な中で巡り逢えたのよ。運命ね」

「そうなんですね。王子は僕も友達です。王子の方がルビーさんよりも先に知り合いましたけど」

「王子が小さい時はほぼ毎週末親子で我が家に来てくれて、よく遊んでたな」

「仲良いんですね」

「お部屋って広くても狭くても同額なの?ルビーちゃんの部屋は広いけどベッドはひとつで、チラッと見えたけど同じくらいでもベッドが3つある部屋もあるのね」

「ここだと8帖以上の部屋はドミトリーって言って相部屋です。他のシェアハウスでも二段ベッド使用する所が多いですね。家賃をより安くできるようで」

「いくら家賃が安くても、プライベートとかプライバシーがないのは私には無理かな」

「僕が知っている新しいタイプのシェアハウスは、個室にシャワールームとミニキッチン付いている所もあるらしいです」

「それはワンルームっていうのではなく?」

最新のシェアハウスは、ビジネスホテルの狭い版のように、しっかりとした鍵付きのドアと水回りも各部屋にあったりする。
共有スペースは、ホテルのエントランスみたいなリビングとコインランドリーみたいな洗濯スペースだったり、レストランのような大きなキッチンがあったり。
ジムエリアもあるとか聞いたことあるかも。
我が家のシェアハウスは全然違うかな。

「僕はお金が無いのと、ファミリー感に惹かれて入居を決めましたけど。パーソナルスペースを大切にする人も多いでしょうし、女性専用も人気みたいですね」

「私の娘はまだ実家暮らしだけど、一人暮らしは心配なので、ワンルームなシェアハウスは興味あるな。安心感あるよね」

「知らない土地で初めての一人暮らしだったら、女の子は安心して住めるかもしれませんね。
そろそろリビングに戻りましょうか」

戻りながら理恵ちゃんは何かを見つけて行動するもんで、ホイミ君は困惑しながらもお付き合いしてくれます。

3.シェアハウスを満喫するご婦人

「どうだった?」

タツ君が聞いてみた。

「友だちの実家とか祖父母の家みたいでビックリしたわ。
シェアハウスってもっとオシャレでまあまあキレイな所かと思ってたわ。でも大きな洗濯干し場は気持ち良かったね」

洗濯干し場、気に入ってくれたんだ。良かった。

「途中で理恵さんが玄関と廊下と階段と共有スペースをお掃除してくださいました」

「わーマジで?ありがとう」

「ルビーちゃんはお料理は好きだけど、他の家事は好きじゃないもんね。いつも事よ」

理恵ちゃんは私とは逆でお料理以外の家事は綿密ながらも素早く仕上げる。
昔からよくお掃除してもらってた。

リビングテーブルに目を向ける理恵ちゃん。

「わ〜すごい。居酒屋じゃん。きれい」

理恵ちゃんの歓迎パーティーのお料理とお酒がリビングテーブルに並んでいる。

「さぁ。あらためて、乾杯」

タツ君の発声でみんなで乾杯。
理恵ちゃんは定番のビール。

「どれもおいしそう。
全部ルビーちゃんが作ったの?」

「我が家ではみんなで協力して生きてるんで、それぞれのご自慢を用意したよ」

「僕はドライフルーツとナッツです。理恵ちゃんの好物と伺ったので、フェアトレードのオーガニックでお酒に合いそうな物をお取り寄せしてみました。
お口に合うといいのですが」

「俺はこの燻製盛り!チーズとうずら卵とスモークサーモン、変わり種は豆腐とちくわね」

「私はご近所でいただいたお野菜のバーニャカウダだよ。理恵ちゃんの好きなアンチョビたっぷりのソースも作ったよ。他はいつもの宅飲み居酒屋メニューね、懐かしいでしょ」

「すごい!すごいよ!みんなそれぞれ用意してくてるなんて。嬉しいよ。早速いただきますね」

燻製に興味深々な理恵ちゃんはタツ君に作り方や作業工程を食い気味に質問してる。
タツ君は朝から100円ショップで道具とチップを買って卓上ガスコンロを使ってもくもくと作ってましたね。
食材を乾燥させる事がポイントのようです。
直火で作ると目が離せないという苦労話もあるみたい。

「この枝豆は!」

「そうなの覚えてる?」

昔々、まだ子供たちが小さい時は理恵ちゃんのお家へ朝からお邪魔してつまみ作りながら飲んでてね、1kgの冷凍枝豆にスパイスや調味料を和えたおつまみがブームでいろいろ試してた。

「フレーバー枝豆ですよ!懐かしいでしょ」

「懐かしい。山椒と、カレー粉と??」

「これはガーリックバター。炒めて〜新作はワサビパウダー!」

「からっ!辛っ!から〜」

理恵ちゃんは辛いものが好きだけど毎回叫ぶ。

「出た!理恵ちゃんの叫び!」

焼き鳥ピンショスも思い出の一品。
冷凍焼き鳥50本入りを愛用していた事もあったけど、子供谷のために串から外したり味のマンネリ化に出番がなくなり一時期はメニューに上がらなかった中、理恵ちゃんの発案でお手頃な冷凍鶏肉大パックを解凍して切り分け一度茹でて火をしっかり通したらタレや塩、カレーパウダー、マヨネーズで味付けをして爪楊枝やお弁当用のピックに刺して、フライパンで少し焼く。
子供達も安全にたくさん食べられるアイディアメニュー。

「焼き鳥も良いね。これはヒットよね。残ったらお弁当に入れちゃったりしてねえ」

ビールもつまみもすすむね。

で。サトシ君はどこ言った?

「サトシ君のリメイク②」

サトシ君、おばさんの勢いに押されて部屋へ閉じこもってしまったのかしら?

「サトシ君ってどこ行ったの?」

「さっき見学会中にはお部屋にいましたね」

「サトシ〜怖くないからおいで〜」

階段を降りてくるサトシ君。手にはお裁縫セット持ってる?

「どうしたのよ〜イケメンと飲むの楽しみにしてるのにぃ」

良い気分の理恵ちゃん。

「理恵ちゃんにおもてなししたくて準備してたんですよ」

「あら〜さすがイケメンのサトシ君。理恵ちゃん嬉しい」

サトシ君の準備していたものは、大量の布コースターとお裁縫箱。

「あれ!これって、この間のフェスでご近所さんから譲り受けたコースターじゃん」

「そうなんよ、使いたくてワクワクしてたんだ〜。
理恵ちゃんとみんなでこれを使って良い物を作って、楽しみたかったんですよ」

乾杯!みんなで協力しながら作業開始。

コースターを裏向きにして9枚並べる。
パッチワークの要領で裁縫用ボンドで連結させる。
同じ物をもう一つ作る。

「繋げると布みたいになるんだね。凄いね。で、ここからどうするのかな」

模様側を内側にして2枚を合わせて袋状に接着する。
洗濯バサミで一辺を3箇所ずつ止めて、しばらく寝かせる。

「俺さ、めちゃシンプルな白Tシャツ買ったんだけど、いまいちインパクトがないのよ。
そこで、このTシャツにこのコースターを使っておしゃれにしたい」

「うーん。市松模様に並べる?」

「くどくないですか?」

「じゃあ理恵ちゃんが教えてあげましょう!
一番気に入ってる柄を選んで」

「おう、理恵ちゃんの案に乗ってみようかね」

タツ君はこの楽しいお裁縫タイムに自分のTシャツをアップグレードするようね。
みんなで知恵を出し合って進めているところ、理恵ちゃんのアイディアが炸裂。
会心の一撃となるか?

「この柄にするのね。ok。じゃこれを左胸に置いてみて。」

「おお。胸ポケットですか?すごい。ワンポイントでおしゃれだし。タツさんタバコ吸うし、馬券も入れられるじゃないですか!」

「でしょう。おばさんの長年のスキルからひらめいてみました」

ポケットの位置を決めたら、三辺に裁縫用ボンドで糊付け。
あら簡単にリメイクかっこいいTシャツになりました。

「良いね。次の競馬はこれ着ていこう。当たりそうな気がしてきた」

「次のG1レースはみんなで行こうよ、東京開催でしょ」

「良いね〜お弁当と敷物持ってピクニックしよう」

「理恵さんもご一緒してくださいね」

「もちろん〜」

「さて、続きをしましょうか」

サトシ君が先ほどの続きを始める。

「まずは表にして整える」

もうほぼバッグだね。

「袋の口に持ち手を付けるよ。
誕生日プレゼントのリボン使いたいんだ」

「いいじゃん!エコだな」

「ちょうどいい長さに調整して、4点をボンドで固定しよう。
乾いたらバツ印を描くように縫います」

「おお!これなら俺もできるわ」

タツ君が縫います。

「できた!すごい!これなら縫い目を気にせずできる!」

「かわいい〜。リメイク?リサイクル?素敵すぎるわね」

「これは理恵ちゃんにプレゼントです」

「おー!」

みんなびっくり。

「嬉しい。ありがとう。みんなで考えてみんなで作ったバッグだね」

「理恵ちゃん涙もろいのかよ〜」

「歳を重ねるとあちこちユルくなるのよ。タツ君がだってすぐよ!すぐ」

「まだまだお酒もつまみもたくさんあるよ!飲もう」

「乾杯」
「乾杯」
「乾杯」
「乾杯」
「乾杯」

「ただいま〜」

「あれ誰か来たな」

今日も賑やかなシェアハウスです。

To be continued…

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