シェアハウスで暮らす2人の子を持つ女性ルビーの日常を描く連載エッセイの第三弾です。第一弾はこちら
▼目次
1.サトシ君とお散歩その1
今日は久々の休日でサトシ君と散歩。
「ルビー、今週近く公園で小さなフェスやるらしいんだけど、一緒に行かない?」
「この辺ってフェスあるの?住宅街よ。クラフトビールとかあんの?」
「あるかわかんないけど、ミニライブ、オーガニックミールとか、採れたて野菜とか?俺の目的はフリマです」
「じゃあ、小さいクーラーバッグに飲み物持って、シートも持って行こう」
というわけで、家から徒歩10分ほどの公園へ向かって二人で歩いています。
「ギターのチューニング聞こえるね。アコギの弾き語りとかするんかな。まだ声聞こえないけども女子だと良いなあ」
「ルビーって時々おじさんなるよね。俺はゴリゴリのフォークをジャカジャカやる男が来たらアガるな」
「ゴリゴリフォークには濃いめの麦焼酎水割りが似合いますかね〜」
「酒の話は平和で良いよね〜。女子のフォークシンガーってあみんとか、イルカとか、森田童子ってリアタイじゃないけど、流行っていたんだよ。今はあいみょんなの?miwaとか大原櫻子ちゃんもそうなんかね?」
「俺はどれもわかんないけど。井上陽水が好きだ!」
「私も井上陽水が大好きだよ〜」
「まいに〜ち吹雪、吹雪、氷の世界〜🎵」
「まいに〜ち吹雪、吹雪、氷の世界〜🎵」
ユニゾンしちゃう仲良し感。
大爆笑しながら、会場に到着。
午前11時平日の公園のフェスは意外と人がいた。
ミニライブのステージ前はすでに前列から埋まっているね。
いつもの事ながら、予習はしないで来ちゃう私たち。
「この辺でどうかな?」
「いいね」
ステージから程よい距離のちょっと木陰にシートを広げて、とりあえず転がってみる。
「うお〜最高だね。深呼吸しまくろう」
女の姿をしたおじさんみたいなルビー(48)とまあまあモテるおしゃれ派遣社員のサトシ(27)がシートで爆笑しながら戯れる。
知らない人が見ると公園にきたイチャコラのカップルに見えるかな〜
年齢差は22歳です。
「とりあえず飲もうか」
「乾杯〜」
どう見えるかなど、どうでも良くて。この時間を共有できる友がいて感謝よね。
「あっちが、フードで。こっちがフリマだね。めちゃ良い匂いする〜」
「お祭り業者っぽいお店は無いね。地域のお店が出店しているみたいだな」
サトシの言うとおり、大きなお祭でよく見る定番のたこ焼きとかベビーカステラとかは出店していないみたい。
「そろそろ飲み終わるから見ながらお食事を買いに行こう」
だんだんとお昼に向けて人が増えてきて行列になる店もある。
「いろいろあるね。とりあえず一周してみようか」
オーガニック野菜の農家直売や、有機野菜のスパイスカレー、ハンバーガーののぼりが見える。
沖縄そばとタコライスののぼり発見。
沖縄大好きなのよね、もう4年も行けてないな。
「ルビー!オリオン生ビールだってよ!珍しいね。飲もうよ」
「良いセンサーですね。飲もう飲もう。」
おいしい。オリオンの生ビールはこっちで飲める所が少ないのよ。
缶のオリオンはこっちのスーパーでも買えるけど、生ビールは嬉しいね。
キッチンカーから賑やかな沖縄民謡が流れてきて、踊り出したくなった。
と思ってたらサトシ君が踊り出してた。
「カチャーシー!カチャーシー !」
カチャーシーは沖縄の言葉でかき混ぜるって言う意味なんだけど、お祝いの席やみんなで集まって盛り上がるとカチャーシーが始まる。
手を頭の上でヒラヒラとする。
男性はグー
女性はパー
手をヒラヒラさせるコツは扉を両手で開け閉めする感じ。
はしゃいでたら店の人が出てきた。
「にいにいカチャーシーうまいねー。ねえねえも上手よ」
にいにいは男の人
ねえねえは女の人を呼ぶときの沖縄言葉だね。
楽しいセッションカチャーシーでした。
お散歩しながら美味しいもの探しは続くよ。
2.サトシ君とお散歩その2
沖縄のキッチンカーを後にして、プラプラ歩いていると
「ルビーちゃーん」
ご近所のおばちゃん達が手を振って呼んでいる
「こんにちは。今日は?」
「私たちは地域協力員ってやつなのよ。今日は地域のフェスっていうのを初めてやってます。お盆の夏祭りとか地域運動会とかは今までやってたけど、今年からフェスっていうの始まったのよ。
建売住宅とかアパートも増えてえきて若い人が移り住んでくれたりしてね。地域でも若い人たちの新しい意見も取り入れて新しいイベントやってくれて、私たちも仲間に入れてくれるの」
「すごいね。地域活性!地域交流!世代間交流!」
「で、ルビーちゃん、フェスって知ってる?これで合ってる?」
「合ってるよ〜みんな楽しそうだし良いですね」
地域のおばちゃん達のお店は、豚汁とおにぎりと漬物とお餅があった。
全部買ってもワンコインの全品100円ってすっごいな。
他に気になるお店もあったけど、みんなの愛が溢れるメニューには敵わないよね。
みんなで持ち寄った野菜や、行政からの補助金で運営しているんだって。
売上金は、地域の子ども食堂への寄付とか清掃活動や集会所の修繕費とかになるんだって。
もちろんみなさんボランティアでやってる。
「こういうイベントが増えてくれると、私たちもやること増えてボケずにいられるわけ。若い人とお話ししてると若返っちゃうかもしれないわよ」
楽しそうでなにより。
そして尊敬する。
私も時間が合えば参加したいね。
「このお酒美味しいですね〜おじさんの地元のお酒とか?」
「おお、嬉しいね。俺の故郷の酒なんだよ、知ってる?」
サトシ君はいつの間にかバックヤード的な休憩テーブルでおじちゃんたちに囲まれてわいわいしている。
「ルビーちゃんもこっち来て飲みなさい。フェスを楽しむんだよ」
おじちゃんもおばちゃんも新しいフェスを楽しんでいるね。
夏祭りの本部テント裏とか来賓席テントは昔からの伝統ですかね。
若いパパ達も混ざって良い雰囲気で盛り上がってる。
盆暮正月の親戚の集いを思わせる雰囲気で善きですね。
「このフリマはおじちゃんおばちゃん達のコーナーですか?興味深いアイテム多いな」
会議机いっぱいに並べられた、手作り品や贈答品などなど。
確かにとても興味深いね。
「フリマって言うの?バザーとか蚤の市とか言ってたわよね。フリマ、フリマ〜!フェスでフリマのおばあちゃんよ。なんかかっこいいわね」
洋裁が趣味だったおばちゃんから大量のファスナーを譲り受け、
昨年喫茶店を閉店したおじちゃんからは布製のコースターを大量に譲り受けた。
どちらも100円でいいよって言ったけど500円渡すサトシ君でした。
「楽しかったね。思わぬ展開だったけどめちゃ楽しめたね。
おばちゃんおじちゃんと途中みんなでミニライブ見に行けたのも新鮮だったよね。
みんな盛り上がっていたし。やっぱり音楽はいいな」
「で。この大量なファスナーとコースターは何に使うの」
「これはね、友だちの誕生日プレゼントになんだよ」
どう言うことなんだ?ファスナーとコースターがどうなるんだ?
そのまま渡すわけないしね。
サトシ君めちゃニコニコしてるな。良かった。
「ルビーも楽しかった?一緒に楽しんでくれてありがとう。さて帰ったら何飲もうかね?ルビーなんか作ってね。」
「ただいま〜」
3.サトシ君のリメイク術
「ただいま」
帰宅すると誰もいなかった。
「さて、改めまして乾杯」
フェスで買ってきた無農薬野菜を洗って切って、これまたフェスで買ってきた自家製味噌をつけて食べることにした。
「おいしい〜!スーパーの野菜となにが違うか説明できないけど、とにかくおいしい。
味噌もしょっぱくないけど味はしっかりで香りがいいね。
オーガニック系を食べちゃうと、この先普通に売ってる物が食べられなくなる気がするのは、大丈夫か?俺」
「わかる〜。実は私もここに住み始めてからすごくそう思うんだよ。
ご近所からお野菜いただいたり、おじちゃんおばちゃんの梅干しとか漬物とかもらって食べているので、お野菜買う機会も減ったけど、買うの躊躇しちゃったりして」
「え?ご近所からの頂き物待ち?」
「違うよ〜いやあね〜」
「ルビーのご飯が美味しい理由はそこにも関係があったのね」
今日地域のフェスに行ってわかった。
美味しい食材でお料理させてもらえる事に感謝ですね。
「で、本日の収穫は、どうなってお誕生日につながるの?」
「知りたいですか?じゃ一緒に作りながらお教えしましょう」
サトシ君は今日買ったファスナーをテーブルに出して、お部屋から裁縫用強力ボンドを持ってきた。
大体同じ長さのファスナーが20本。
「ファスナー大変身作戦!
ルビーも一緒に作ろう。好きな色を半分こしよう」
だいたい10本ずつ選んだら、スライダー側を裏向きにして半面に裁縫用強力ボンドをを塗って重ねて、さらに重ねて重ねて10本をつなげて一枚の布のような状態にします。
スライダー側を内側にして、筒状になるように強力ボンドで接着。
両側を糸でぐるぐる巻きにしてしっかり縛る。
ボンドが乾くまでじっくり待つ。
「今日みたいなフェスって地域活性化とか地域交流とか、めちゃいいよね。俺、憧れる。
ルビーは今までいろんな事してるから関わってきてる?」
「そだね。地区で班長が回ってくれば、年間行事のお手伝いしたりあったけど、任期が終えたらその次の年はあんまり関わらなくなるよね。
子供が小さい頃は地域の運動会行ってみたり、夏祭り行ったりしたな。
顔見知り似合うと、お手伝いもしないでイベントを楽しんで、なんとなく気まずさ感じてみたりして。行くだけじゃ協力とは違うとか思っちゃうよね」
「そういうイベントって来てくれる人がいてくれるから、がんばったなってなるんじゃないかな?」
そうだよね、みんな環境違うし生活している時間もいろいろだしね。
地域に関わるってだけでもいいのかもな。
「また見つけたら行こうね。運動会とか夏祭りとかたくさん行こうね」
「ルビーはご近所さんと仲がいいから情報調べといてね」
うとうとしてたら時間経ってた。
サトシ君も寝ちゃってるね。
かわいいな。
ガン見してたら…起きた。
「寝てたね〜そろそろ裏返してみましょう」
「はい、先生」
スライダーが表にくるように丁寧にひっくり返す。
「おおおお!ペンケース?ポーチ?」
「そうです。超簡単リメイク・リサイクルなペンポーチだよ」
すごいな。バザーでたくさんのアイテムから見た時点で考えついていたんだろうか?私には思いつかないよな。
「また一緒に作ろうね」